2008年7月30日水曜日

WTO閣僚会合決裂で、得した人と損した人

WTO閣僚会議の決裂は、世界経済にとってきわめて残念な結果。これで確実に世界経済の期待成長率は低下することになる:
NIKKEI NET(日経ネット):WTO閣僚会合決裂 緊急輸入制限、米国とインドが対立: "今回の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)には153の国と地域が参加した。農産品や鉱工業品の関税を一律に削るルールをつくり、世界全体の貿易拡大につなげる狙いがあった。2001年末から7年に及ぶ議論を重ねたものの、急速に発言力をつけた新興国と、議論を主導する力を失いつつある先進国の溝は大きかった。"
でも一律にみんなが損するかと言えば、そういうことでもない。国単位でも、国内利害関係集団単位でも、得する集団(勝ち組)と損する集団(負け組)はまだら模様なのである。

星取り表:
  1. まず国ごとの対外貿易依存度の違いがある。米国、EU、ロシア、中国などの巨大国はそもそも貿易依存度が小さい。一番大きな悪影響を受けるのは日本などの中小国。特に日本は世界の自由貿易システムにただ乗りして発展してきただけに今後の世界貿易の停滞はとても痛い。

  2. 次にWTOへの依存度の違い。米国などはもとより、シンガポールなどの小国も、もはやWTOは早々に見限り、すでにFTAに力点をシフトしている。韓国ですら米国とのFTAを進めている中、世界でFTAが一番遅れているのは国内農村利権集団の抵抗のおかげで何も出来なかった日本。日本は「WTO命」と今までWTOにすがってきたが、本命を間違えていた。すでに遅し。

  3. 国内的に言えば「農村利権集団」が勝ち組。WTOがらみの補助金を期待していたのが当て外れになったぐらいで、貿易依存度を下げざるを得ない日本の国内需要は確実に増えるし、「言い値」で売れるので大儲けできる。自分で使う石油輸入代金すら稼がずして世界で一番の「勝ち組」になったニッポンの農家。反面、日本の都市勤労者は「負け組」。世界で一番ひどい「負け組」。世界貿易が停滞し日本経済も当然停滞する。所得は増えるどころか逆に下がる。一方で国内農産物の値段は上がる。泣きっ面に蜂なのである。

  4. 日本の国内経済は停滞するので、せめて土地の値段ぐらいは下がるのかと期待したいところだが、そうではないだろう。農産物の輸入は日本での稀少資源である「土地」の輸入でもあるから、それが順調に進まないと国内の土地の価格が相対的に上がってしまう。地主農家は笑いが止まらないが、都市勤労者のマイホームは兎小屋のままだろう。

そういうことで、今後、日本の都市勤労者は「節約」に努めるしかない。結構なことでもある。あまりに今までの日本人の消費行動はバブリーであったから。特にブランド農産物や鮨屋にバカなお金を使いすぎていた。日本人の消費行動はこれで健全化が進むと考えれば、あながち悪いことばかりでもないのである。

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